○まずは入口から スロープをつくる
建物の入り口にはたいていの場合、段差があります。
年間降雨量が多い日本の特徴で(雨が流れ込まないよう、地面の湿気があがってこないよう)
出入り口の段差を解消するのがスロープです |
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学園大学のスロープの特徴は、スロープに見えないスロープ。
3方向からスロープを作っています。
壁の床のラインをみるとスロープだと言うことがかすかにわかりますね。
学園大学のキャンパスは高低差がありません。
出入り口段差を解消するため、敷地全体のかさ上げをしています。 |
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玄関ポーチの階段を段差をスロープにした例です。
階段があって一部をスロープにする例は改装だけでなく新築にもよく見られますが、この場合は、玄関ドアの幅全てをスロープにしているのが特徴で、車いすだからスロープ、歩く人は階段を使う、ということではなく、ここを通る人は全員スロープを使う、という考え方をしています。 |
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敷地内の段差はなくしましたが、唯一残る1段の段差です。
学園大の中には段差がなくても、街中には至る所に段差がありますので「車いす体験教室」をするときに利用しているそうです。 |
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○自由に動ける魔法の箱 エレベーターをつくる
上下移動を助けるものの代表は、エレベーターです。
先ほど駅の利用の場面でも登場しました。
最近はホーム用エレベーターも販売されるようになり、便利なものの一つですが、もう少し価格が低くなると気軽に利用ができるようになりますね。 |
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ここ、金城学院大学でも採用されていますが、エレベーター室を外付けにしています、機械室が1階や最上階に必要になる場合もあります。
ここは、出入り口があったのでしょう、スロープの出入り口が設置されています。 |
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全部の棟にエレベーターをつけるのではなく、隣の棟とデッキでつないで一つのエレベーターを共有しています。
また、車いすでは雨の時に傘を持てないので、雨に濡れないで隣の棟に移動することも必要です。 |
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○お出かけのための必需品! トイレをつくる
入れるトイレがない、使えるトイレがどこにあるのかわからない、ために、外出をあきらめる車いすユーザーが多くいました。
街中を移動する手段も必要ですが、トイレがないということは致命的です。
もし自分に入れるトイレがなかったらどうか?と想像してみてください。
学校、買い物、病院、食事、映画、飲み会、旅行、あきらめなくてはいけない場面ばかりですね。
学園大では、車いすで利用できるトイレはいくつかありますが、初めて作られた、トイレを紹介します。 |
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入り口には、車いすマーク、非常灯、インターホン、開く、閉じるのボタン、がついています。
ドアの開け閉めは、機械式ボタン、センサー式ボタンなど一つ一つのトイレに工夫がしてあります。
ボタンは、車いすに座っていても届く高さ、手の動きが不自由でも押せるようなサイズを採用します。 |
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トイレのドアは引き戸です。
ドアは開き戸は少なく、車いすで近づけることができる引き戸の採用が多いです。
下にレールのない吊り戸式がメンテナンス上も使いやすい。
村上さんのレクチャーを聴きいっている旅の仲間たち。
こんな写真も撮れるくらいの広さがあります。 |
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今では珍しい、和式トイレ、車いすからあがり使います。
車いすで近づきやすいよう蹴込みが作ってあります。 |
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今はほとんどが、洗浄便座付き洋式便器が使われます。
(ふつうの操作盤は位置や大きさから使えない場合もある)
手すりは全て固定ではないほうが、体の状態によって使える人が増えます。
この場合のように右側に開くとか、上に跳ね上げる手すりがあります。
赤い玉を引っ張るようになっている非常ボタン便座から落ちたり、倒れたりしたときの対応をします、ボタンの先に人がいることが要件になります。 |
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紙巻き機(片手で使えるものが使いやすい)、押しやすい水洗ボタン、インターホン(ドアをたたいて入っています、といえません) |
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○学園大で気になるバリアフリーなものたちを紹介します。 |
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この日は学食(30年ぶりです!)で昼食をとりました、食券を買っているところです。こんなふうに手が伸びる人はいいですが、手が伸びない、投入口にコインを入れるような細かい作業ができない、という場合もあります。
券売機は、至る所にありますが、こういう場合に配慮してあるものは少ないです。
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で、最近現れてきた、缶ジュース自動販売機
コイン投入口が大きい、選択ボタンが選べます。
コイン投入と飲み物の取り出し口が床から1.1メートルくらいのところにあり取り出した、缶やボトルがおける棚もついています。
隣の自販機と高さを比べてみて。
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熊本学園大学の正門です。
手前の黒いところが公道です、煉瓦色のインターロッキングブロックの部分が学園大の敷地です。
視覚障害者誘導ブロックをみてください。
手前の公道部分は黄色が鮮やかで目立っていてよくわかりますね?
学園大内はインターロッキングブロックの色と同色で区別は付きにくいです。
視覚障害者で全盲の割合は少なく、色でわかるようにすることが必要と言われています。
学園大では障害学生サポートチームがあり、移動サポート(見えない、動けないなど)と、ノートテイク(聞こえない、書けないなど)が行われています。
使える誘導ブロックが構内全て設置されていなくても、学内の移動には問題はないようです。
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最後に、学園大のバスです。リフト付きバスです。
学生もですが、教授にも車いすユーザーがいるそうです。
大学では校外学習や郊外に合宿所などがありますね、そういうときに活躍するのでしょう。
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■鬼頭より一言
約30年前に、工学部建築学科に入学しました。
子どもの頃から建築デザイナーを目指していて、苦手科目を克服しての入学で、4年間の大学生活は非常に充実していました。
運よく、小さな個人建築設計事務所に就職して、子どもの出産まで8年間つとめました、この8年間も充実していて建築設計は天職とまで思うほどでした。
しかし、業界はバブル期に入っており、設計の仕事に壁を感じていたところで妊娠がわかりました。
出産後、保育園がみつからず、職場復帰はかないませんでした。
職業で自分の思いを全うすることは難しいです。
人にやさしい街づくりとの出会いは、大学のゼミです。
自分からこの教授、このゼミ、と選んだわけではなく、友達に誘われて入りました。
そして、14年後、また、大学のゼミの友人に誘われて「人にやさしい街づくり連続講座」の受講を決めました。
愛知県が人にやさしい街づくり条例を作り、関連プロジェクトの一つとして、講座を開催していました。
まちづくりの担い手を養成する講座です。
そこで出会ったのが、ひとまちネット理事の星野広美、理事長の曽田忠宏です。
講座は今年で10年目、途中で講座運営のボランティアとして参加したり、講義を聴講したりしていくうちに人の輪がどんどん広がっていって、とうとう9年後に法人設立まで至りました。
役員は12人いますが、若いのが特徴です。
年齢順でいくと私は上から4番目です。
仲間同士で話しているときは年は全く気になりませんが、書類を作ってるときなどに改めて若い仲間の力に感謝しています。
若い人たちから、エキスをもらっていますので、年齢不詳とよく言われます。
年をとってから(40歳超えてから)このような出会いが、待ち受けているとは思いもよりませんでした。
でもやはり一番最初にゼミに誘ってくれた友人がいなければここまでこなかったということになります。
自分から望んで入った世界ではありませんが、今はどっぷりはまっています。
家族からも「お母さんは元気に飛び回っていた方がいい」などといわれているくらいです。
私だけでなく、きょう参加したメンバーにもそれぞれの出会いがあってここにいるのです。
皆さんはどのような出会いがまっているのでしょう。
大学で勉強したり仲間と遊んだりするだけではなく、いろんなことにチャレンジして、思いがけない出会いと出会ってほしいです。
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