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2006年度 人にやさしい街づくりを提案する

第5回 生活を考える
とき:8月19日(土)13:00〜17:00
ところ:愛知県社会福祉会館 3階ボランティア学習室
 

講義「障害者運動と地域居住」
      講師:山田昭義さん(社会福祉法人AJU自立の家 常務理事)→こちら

講義「居住福祉の論理」
     講師:岡本祥浩さん(中京大学総合政策学部 教授)→こちら

グループの時間→こちら

 今回は居住という観点から生活を考えます。

13:05 講義「障害者運動と地域居住」

    講師:山田昭義さん(社会福祉法人AJU自立の家 常務理事)

1.愛知の福祉の街づくり運動
バリアに溢れた街
・ 当時、車いすの人は脊髄損傷も四肢マヒ者もひとつの段差で立ち往生していた。障害者のスポーツなどが発達してくると、脊髄損傷の人は一段ぐらいの段差は自分で車いすのキャスターを持ち上げ上がって来れるようになった。
・ また、当時の社会では一般的には車いすの人は珍しく、「かわいそう」「悪いことをしたからあんな風になったんだよ」と誤解と偏見に満ちた社会だった。
・ 昭和48年、仙台市で車いす市民全国集会開催。福祉都市元年で北九州市と仙台市が選ばれた。全国集会に出掛け初めて電動車いすを見て試乗もした。

2.障害の概念の確立
1981年 国際障害者年「完全参加と平等」をテーマ
・ 障害は社会が創りだしたもの
・ 機能障害・能力障害・社会的不利。この概念のどこかに該当する人は障害者。
→障害者というと「機能障害」だけが要因とされるような社会
  電動車いすに乗ることによって外出が可能になる
  どこかに障害があるとなかなか就職できなかった
DPI世界会議の意義
・ 専門家から排除された人たちの思いが形になった
・ 障害者は研究者の研究素材でしかないのか
・ 当事者主権と自己決定
→専門家はなぜ当事者の声を聞こうとしないのか?
専門家への疑問
・ 障害者にとって専門家の役割とは何か?

3.社会的弱者と専門家
・ 戦前 貧しい社会や未成熟な社会では、福祉政策はほとんどなく、家族に依存してきた。宗教団体の一部が福祉政策を代行してきた。
・ 東京パラリンピックを契機に、施設福祉が一気に拡がった。それを推進してきたのは家族であり、専門家であった。障害当事者の気持ちとは大きく乖離していた。

4.AJU自立の家の17年間の取り組み
理念
・ 施設ではなく、親や庇護の元でもない。地域社会で当たり前に生活していきたい、と言う障害当事者の熱い思いを大切にしたい。障害者福祉ホームに基づき、それを「障害者の下宿屋」として、地域に出られる基盤ができた。
・ 福祉ホームサマリアハウスは原則4年で卒業するシステム。その間に地域で生活できるように自分が主体となってノウハウを身に付けていく場所。

【AJU自立の家実績報告】
○自立生活体験室の利用状況(平成2年〜17年)
療護施設や長期在宅の人などが、一泊二日から一週間体験する。
・在宅      73名
・通所授産    16名
・デイサービス  17名
・療護施設    47名
・更生施設    27名
・病院      12名
・障害児施設    7名
この中から、福祉ホームサマリアハウスへ入居した人・・・55名
ホームを経ないで自立生活している人・・・3名

○福祉ホームサマリアハウス退去後の生活の場
・アパート等で自立生活   64名 (公営住宅入居者3名)
・自宅へ           9名

公営住宅を「福祉住宅」と名称変更するなどし、障害者が公営住宅に入居しやすい方法を考える必要がある。

5.障害者自立支援法がもたらしたもの
自立支援法の功罪
・ 障害者サービスを一元化
身体・知的・精神障害に関わらず、障害者の自立支援を目的とした共通の福祉サービス制度へ(→程度区分が実状に合っていない)
・ 地域の限られた社会資源を活用できるよう規制緩和
・ 障害者が企業等でもっと働けるよう、福祉側からも支援
・ 公平なサービスの利用のための手続や基準の透明化、明確化
・ 利用したサービス量等に応じた「公平な負担」→重度の障害者ほど負担が重くなる
・ 国の財政責任の明確化

居宅生活支援費より施設入所の予算が重視されている。
財源不足により、いずれは支援費制度は介護保険へ統合されるのではないか。

14:45  講義「居住福祉の論理」
          講師:岡本祥浩さん(中京大学総合政策学部 教授)

1.居住の意味と居住福祉
住居とは―暮らしと住宅
居住とは―住居を中心とした暮らしのさま(健康的に生活できるなど)
居住福祉とは―適切な居住が人々の暮らしを向上させること、幸せに実現すること、またはそれを目指すこと(すべての人が対象)
暮らしとは―<目的>―生命の再生産
…動物にとっては次世代が生まれるまで(多くは親の一生が終わる)
  …人間にとっては次世代を育てる場、安心して育てられる場
―社会貢献、労働…生き方を見せる場、次の社会をつくる役割
―<構造>―活動⇔休養  
活動・移動・住居(住居と仕事場が近いと、住居での滞在時間が長くなる)
…活動とは、労働、買い物、飲食、娯楽、文化・教養、医療・福祉、保健、リクリェーション、人と人との交流
暮らしの基盤としての住居

2.住居の条件
適切な住居 
空間条件…・適切な空間(生命の安全と健康を守る)
                    →冬場は脱衣所との温度差が原因で浴槽で溺れたり、家内の段差で転倒するなど
                      けがをしたり亡くなることもある。
      ・プライバシーとコミュニティ→マンションなど自分の住居より上層階の住人については知らないことが多い。
                      子どもが外に出にくい。
       経済条件→家賃はなかなか変わらない。
              家賃が払えなくなると住めなくなる。
人間的要因…・ライフステージへの適合(就学、就職、結婚、出産、成長…)
        →結婚をすれば「二人」の生活する場に変わる。
         家族形態の変化、年齢の変化により必要とする施設が変わる。
         産婦人科、保育園
       ・参画(社会、生活環境)授受の関係ではない
          労働、社会貢献、生活環境の維持、管理、改善

★ 必要な条件は、人により、時期により、社会により異なる
★ 生活環境、社会は常に変化する
★ 必要条件に気が付かない場合が多い

3.居住ニーズ
(1)居住ニーズの把握と施策
  経済活性度⇔(個別的なニーズ〜一般的なニーズ(低所得、高齢、難病、公害))
   ・単位が小さいと表面には見えにくい 
   ・家族が支えている場合が多い

(2)これまでの居住ニーズへの考え方
  ・短期的→仮設住宅など
  ・波及効果(トリィクルダウン)少しよい住宅をつくる。その下の層がそこへ移りという具合にそれを繰り返し、
   よくしていこうという考え方。ある程度のところまで進むと進まなくなる。

(3)居住ニーズの把握について
顕在
潜在…・居住者が意識しない
     ・主張できない(時間、能力、媒体、あきらめ…)

★条件により異なる…・年齢、ライフステージ、身体条件(障害、アレルギー…)
               立地(市街地、工場地、交差点、住宅地…)

4.適切な居住の保持・実現のために
(社会)ニーズの発見⇔(個人)ニーズの主張 インターアクティブな関係が必要
・ 居住者の参画(自立)が必要 
  自立の必要性…与えられるだけで満足してしまってはダメ
・ 専門家の関与(気が付かないこと、わからないことがある)が必要
・ 社会への包摂(インクルージョン)が必要(情報から疎外されない)

16:15 グループの時間

・各グループで今日の講義の感想を話します。

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