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提案・研究会

トップページ提案・研究会愛知のひとまちを良くしたいWS第6回

第6回 「暮らし」と「まち」の課題〜視覚障害とその支援の視点から

■とき:2003年10月24日(金)夜6時30分〜8時50分
■ところ:あいちNPO交流プラザ(名古屋市中区三の丸3-2-1 東大手庁舎1階)
■参加人数:22名
■お話:梅尾朱美さん(愛知視覚障害者協会事務局長)
    橋井正喜さん(名古屋市視覚障害者協会)
■配付資料:第5回WSの議事録

  第1〜5回は、条例を読む、条例の制定過程、ハートビル法・交通バリアフリー法の実際、条例や取り組みの成果、施策の展開の方法、他府県の条例改正の状況等をみてきた。
 第6回以降のWSは、対象を限定しながらディスカッションをしていきたい。今日は、視覚障害と支援の視点で議論していく。
 愛知県の条例の「整備基準」は、これまで学習してきたように、車いす・移動障害の視点を中心に組み立てられている。今日の話題は、愛知県の条例の中にはほとんど入っていない視点だと認識している。これまでに条例改定をした大阪や兵庫でも、視覚障害の視点はあまり入っていない。
これは、対応方法がよくわからなかった、運動側と自治体側あるいは建設業界との関係が遠かった、ということだろうか・・・。
 愛知県では、条例をつくってからぼつぼつ10年になる。この間、大きく広がってきている中で、何が加わってくるのか。今、条例を変えるなら、当然、視覚障害という視点が入ってくるべきである。条例にどう反映させるのかを議論したい。

◆梅尾さん

★限定されている視覚障害者への対応手法
 街づくり条例は、車いすの視点でつくられている。視覚障害者という視点は、せいぜい点字ブロックぐらいしか入っていない。
 96年に愛知県「人にやさしい街づくり連続講座」を受講した。そのあたりから、なぜかイライラを感じた。この苛立ちはなんなのだろうかと悩んだ。
 今の街づくりの視点は、車いすの視点なのだとわかった。車いすの方々が本当に苦労されてきたのを知っている。車いすの視点がいけないのではなく、視覚障害者の視点をどういう風に盛り込ませていくのか。そこが見えなかったからだと思う。
 見えないはずです。手法がないのです。視覚障害者のためにあるものといえば、点字ブロックと音響信号機と音声ガイドの3つぐらいしかない。

★町の急激な変化
 しかし、町並みや建物はすごい勢いで変化している。その状況下で、たった3つで何とかなるわけがない。というのが、私の7・8年間の苛立ちの原因だろうと思う。
 その状況は、ここのところ加速している。その加速の原因は、いくつかある。
1つは、規制緩和に伴う街と建物の多様化。ニーズの多様化である。規制緩和により、いろいろなことが可能になった。その可能になったことが、私たちの困難を大きくしている。わからなさを大きくしている。
2つ目は、リストラだと思う。省力化ということで、現場に人がいない。これまでは、人の手を借りてなんとか通り抜けることができたことが、人がいないために人の手を借りることができない。
 この2つのことが、私たちを苦しめ困難を大きくしている。

★ソフトをシステム化する
 そういう中で、私たちの移動や外出の保証をしていくために、安心で安全に移動ができるために、条例に何が盛り込めるか考えると・・・
 それは、人的な対応・マンパワーの「仕組み」をつくることである。それを、どうつくっていくのかである。
ハード面で自分たちの行動が保証されることはとても大事なことではあると思うが、これだけ多様になり、複雑化すると、点字ブロックと音響信号機と音声ガイドだけでは、対応することができない。新しいものを生み出していくには、まだまだ時間がかかるし、この勢いで進んでいくと、4つ目の新しい物ができてきた時には、あまり役に立たない可能性がある。そこでハードをどう充実させるかと同時に、ソフトをどうハード化するか。ソフトをどれだけシステム化するかを考える以外にないと思う。

★ガイドヘルプ+・・・
 今年から支援費制度が導入されて、ガイドヘルプをめぐる問題が大分変わった。地域のボランティアも少しずつ充実してきているように思う。けれど、まだ制約が大きい。ここの充実を図っていかなければならないことはわかっているが、ここだけを充実させていったとしても、私たちの移動の自由や安全が保たれる訳ではない。もう少し新たな仕組みをつくっていかなければいけないと思う。
人的対応のシステムができさえすればいいのか、というと、それしか「仕方がない」と思う。これをその場その場の人の手に委ねるということは、視覚障害者のプライバシー権が総体的には後退するということをおさえながら、この運動をしていかなければいかないと思っている。
 具体的にはどうやってつくっていくのかというと・・
熱田区にはイオンという複合ショッピングセンターができた。敷地境界から点字ブロックが入り口まであり、入り口でそれが枝分かれしている。その先にインターホンがあって、そこで援助を求めることができる。こういう時代になったと感じている。これは1つの方法だろうと、思っている。大きなところだけではなく、様々なところにこのシステムがあると建物に関する問題は1つ緩和されると感じた。
 これだけで、街を歩くという問題が解決される訳ではない。この部分をどうするのかということが大きな問題である。今、ガイドヘルパー・地域ボランティアの支援を受けているが、もっと制約が少なく、サービスを受けられるというシステムをつくることが大事である。街づくり条例に盛り込むかどうかは別として、考えていかなければいけない問題である。

★ハードでも・・・
 それと、もう1つはハードである。
有効だと認知されているものに、点字ブロック・電車のホームの可動柵がある。
一方、銀行のATM機の問題がある。現在のタッチパネル式のATM機は使えない。従来のボタン方式で点字表示、音声ガイドがあれば、視覚障害者でも単独でATM機を使うことができる。しかし、設置されている所が非常に少ないために、事実上、使うことができない。せっかくある有効なハードは、しっかり活用する。そして、新しい人的パワーのシステムをつくっていくこと。

★変化についての情報
 視覚障害者は、情報障害者だということに関係すると思うが・・。新しいものがドンドンでき、方式が新しく変わっていく。けれども、その変わったことがわからない。自分の身近なところで起こったことはわかるが、点でしかわからない。線になったり、面になったりして繋がらない。だから、どれくらいの速度で街が変わっていっているのかが把握ができない。このことをどうしていくのか。やはり、情報の保証ということになるのだと思う。みなさんで提言し、長い目でみた課題として考えてほしい。

◆橋井さん
私は、弱視だったために、あまり不自由してこなかった。しかし、ここ1年間で急に弱視が低下した。そのため、紙の資料は役に立たない。現在は、点字を読んでいる。
都会での移動はあまり困らないが、知らない場所での移動は難しい。田舎では点字ブロック等、何もなくて困る。移動が安心して自由にできることが願いである。
ガイドヘルプができて20年になる。9〜17時ならガイドヘルパーの利用ができる。それ以外は、子ども・盲導犬等で対応するという方法が考えられる。しかし、どこに何があるかがわからない。音声誘導装置で、音源から案内がでる仕組みがあるといい。

★教育
現在は、ぶつかった人に案内してもらっている。これが一番の策である。
出会った人に障害者の対応を快くしてもらえるためには、子どもの頃からの教育の中で培うことが大事だと思う。そのために現在、学校で子どもや会社の社員教育に出かけている。子どもは素直である。もっと、視覚障害者について学習してほしい。
現在、統合教育が叫ばれている。私は、見えなかったが一般の小・中学校に通っていた。同級生たちは、親切にしてくれた。10年後の子どもたちは、教育を受けることで違ってくると思う。

★ハードの統一
エレベーターは、メーカー毎で違うために困る。一方、交通標識や信号機は、統一されている。全国統一するためには、JIS規格にしないといけない。
点字ブロックはJIS規格ができたが、点字ブロックの色までは統一されていない。交差点の案内も統一されていない。


(以下、質疑応答、討議・・・)
■現在ある有効なハードは?
・点字ブロック、音響信号機、音声ガイドの3つである。

■点字ブロック
★点字ブロックの規格は?
・平成13年にJIS規格ができ、ようやく全国統一の方向に進む。
・点字ブロックには、点字ブロック・誘導ブロックがある。
         点字ブロック 30cm×30cmに、5点×5点 
         誘導ブロック 30cm×30cmに、4本線 
・色の指定までは規格化されなかった。できなかった。

★形・形状は決まっているが、色も、決まっていればいいのか?
・点字ブロックは目立つ黄色がいい。そして、黄色が目立つ色で床をつくってほしい。
・弱視には、クリーム色の床に黄色の点字ブロックは見にくい。
・弱視は、人によって見え方が違うため、一概にこの色がいいと言い切れないところがある。

★なぜ、JIS規格をつくる必要があったのか?
・点の大きさ・形・色が多様化して、点字ブロックの意味をなさなくなった。
・規格化してしまえば、簡単に変えられない。しかし、一番の問題の「色」をJIS規格で決められなかった。問題が解決されるように規格化できなかった。色の指定がされていないので、金沢では、景観に合わせた点字ブロックの色である。

★「全国統一」をしたいという時に、「地方」が決めてしまうのはいいのか?
・当事者としては、決めてほしい。
・名古屋市では点字ブロックは黄色である。これは、障害者運動の成果である。そして、運動を支える世論があったからである。当事者としては、点字ブロックの色を黄色に決めてほしい。そのためには、市民からどれだけの支持がしてもらえるかが重要である。どうして、黄色が必要なのかを伝えることである。
・障害者の運動の出発時点では、詳細な規格よりも、まず点字ブロックを増やすことを目的とした。しかし、世の中には全盲者より弱視者の方が多く、色の統一が叫ばれている。

■建物の中で最低限規格化したいもの
★入り口の扉
・鋏まれる恐れがあるものは使わない。回転とびらは使わないでほしい。
・できるだけスムーズに移動ができるものを使用する。

★階段
・階段に点字ブロック・滑り止めがほしい。
・段鼻の滑り止めは、わかりやすい色がいい。
・階段の段毎の高さが違うのは怖い。

★エレベーター
・EVを設置する場所、ボタンの配列・形を統一してほしい。
・弱視には手で触っても、見てもわかるものがいい。
・EVを設置する場所は、入り口の近くでわかりやすいところに設置してほしい。

★部屋の明るさ
・弱視には、部屋のルックス(明るさ)とコントラストの関係が大事である。
・点字ブロックが黄色だと、床の色がグレー・黒がはっきりする。しかし、全体の部屋のコントラストが暗くなり、見えにくくなるという欠点がある。
・明かりの方向、建物の構造で広がりを演出することがあるが、わかりにくくなることがある。
・ルックスの数値が低くても、天井と壁と床と照明のコントラストの工夫によっては、わかりやすいことがある。光・素材・周りのデザインとの関係に左右される。ルックスの数字だけを統一するのは、難しい。

★トイレ
・トイレ内の配置がバラバラである。トイレの便器・ボタンの位置を統一化してほしい。
・トイレの個室内には、点字案内板・拡大文字・言葉・図の併記をする。
・扉の内側に点字の案内板を設置することは有効である。
・男女のトイレの位置を統一してほしい。
・トイレのサインは、形をはっきりしたサインにし、目線の位置にわかりやすく付ける。

★音声ガイド
・点字はどこにあるかわかっていないと意味がない。音声ガイドが有効である。そして、音声ガイドの統一化が必要である。たくさんの装置を持ち歩くのは大変である。ICカード1枚で建物から音声がでるようなシステムにしてほしい。「男子トイレです」「女子トイレです」「エレベーターです」「エスカレーターです」「上りです」「下りです」と、音声で案内してくれるとよい。
・音源が違う建物から鳴るもの、自分の手元で鳴るもの等様々である。建物からなるように統一をしてほしい。
・すぐに統一化は難しい。製品開発する側は考案し、当事者はそれに飛びつく。物のない段階での統一はできない。いくつかできたところで、はじめて統一しようという流れになる。

■地下鉄の階段の「ピ〜ンポ〜ン」:誘導チャイム
・切符を買って乗るまでのプロセスは考えられているが、電車を降りてからが考えられていない。どちらへ行けばいいのかがわからない。電車のホームは危険である。疑心暗鬼のまま歩くのは危険である。そのために、階段の方向を知らせるために提案した。
・島式のホームにしか付いていない。相対式のホームには付いていない。反対側の音を聞き間違えてホームに落ちると危険だからである。
・金山駅には、島式のホームが2本ある。ここには付いていない。同じく、反対側の音を聞き間違えるからである。
・推測できる危険は推測して、できるだけことを考えたつもりである。これだけあればいいというものではないが、一定の効果はある。階段の位置がわかり、自分で移動ができる。

★金山駅では、あちらこちらに設置されているが・・・
・音声誘導のピンポンをつけましょう、と基準に書いてあるので、名鉄もJRも基準に従って付ける。しかし、隣り合って3つ鳴った時にどうするのか、ということが考えられていない。
・ガイドラインの本当の精神をくみ取ってくれればいいが、せっかく整備しても、無効になったり、逆効果になることがある。

★ガイドラインによる逆行?
・ないことには始まらない。広げていくことが必要である。
・つくったら終わりではなく、そこから改良していく、見直す「仕組み」が大事である。また、精神をくみ取っているのかを確認することも大事である。

■どの大きさから基準を適用していくか?
・大きな建物内では、音声誘導・点字ブロック等があっても、一人では広くてわからない。大きな建物では、人の手を借りるしかない。
・100〜200uの小さな建物に、きめ細やかな配慮をしてほしい。
・小さい建物にどういう基準を要求するのか。近所の八百屋に点字ブロックというのは無理なのではないか。

■統合教育へと進む?
・統合教育の流れの中、去年文部科学省が特別支援教育を打ち出した。確かに、統合教育の進展ではある。しかし、枠は緩やかになったが、教員の人数は増やさないという考えがみえる。
・統合教育を進めるのであれば、いじめ問題を解決しなければいけない。教育にお金をかけてほしい。これがなければ、賛成できない。
・地域教育・生涯教育が盛んになってきている。
・子どもたちが、障害者と接する機会をつくることが大事。種をまくことである。そうすることで、10年15年先に統合教育に入っていくのではないか。
・養護学校から地域に帰っても、障害者はお客さんになってしまう。統合教育で切磋琢磨しながらいく方がいい。

■情報をどう届けるか、情報へのアクセスは?
・世の中にどういう情報があるかを当事者が知らない。
・求めている情報を一般市民は知らない。
・図書館、人に聞く、パソコンという情報源がいろいろあるが、やはりフィールドワークが大事。
・「会」に入らないと情報が得られない。
・情報は数限りなくあり、興味が違う。そのために、必要な情報が入ってきにくい。自分たちが発言する場の情報がほしいがわからない。
・情報の共有ができない。(点字ブロックを知らない人がいる。)
・自分たちで必要な情報をチョイスしている。
・地下鉄、バスには情報がいっぱいある。そういう情報が知りたい。という気持ちが強い。
・障害者は、情報はタダだと思っている。しかし、情報はタダではない。意識が違うのではないか。情報がなくても生活はできる。育児生活には、気にならなかった。
・ホームページでは、画像中心になってきており、情報を得ることが難しい。
・耳からの情報が少ない。
・視覚障害者自身の問題もある。大部分の方は、点字が読めない。

■愛知県の特性を組み込む
・愛知県の特性は、車社会である。
歩車分離がされていない。自動車優先の社会になっている。道路から一番入りやすいのが駐車場の入り口である。ところが、歩行者の入り口はわかりにくい。


<次回>
● 聴覚障害とその支援の視点を中心に議論をする。
● 聴覚障害以外の方も一緒に議論してほしい。

(記録:小寺岸子)

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