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提案・研究会

トップページ提案・研究会愛知のひとまちを良くしたいWS第4回

第4回 ハートビル法・交通バリアフリー法の実際

■とき:2003年9月17日(水)夜6時55分〜8時55分
■ところ:あいちNPO交流プラザ 会議室A
(名古屋市中区三の丸3−2−1 東大手庁舎1階)
■参加人数:15名
■お話:平山晶人
■配付資料:
・第3回WSの議事録
・高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律、施行令、施行規則
・高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律の一部を改正する法律案に対する付帯決議
・特定建築物及び特別特定建築物の範囲
・ハートのあるビルをつくろう(監修:国土交通省)
・ハートビル法に基づく認定件数の推移と認定件数用途別内訳(平成13年度末現在)
・平成15年9月5日現在の基本構想の受理状況(計97市町村)
・高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律の基本方針
・高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律要綱
・高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律
・移動円滑化のために必要な旅客施設及び車両等の構造及び設備に関する基準
・【交通バリアフリー法】パンフレット 誰もが使いやすい交通機関に!
・愛知の「ひとまち」を良くしたいワークショップのお知らせ・・・5回めの案内


「使える」が、問題がある。円滑利用とは?


「○○が望ましい」という表現でよいのかなぁ?


「災害時」のEVは使えるか?災害時のことも念頭に置かなくては使えない?


今回は、資料が多いです。

 

■ハートビル法について・・・
 正式名称は、「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」。1994年6月29日に公布。昨年、2002年7月12日に改正され、2003年4月1日に施行されている。
 対象は建築物で、2000uの建築物(資料参照)の新築・増築・改築・用途変更におけるバリアフリーの義務付け、利用円滑化基準、これに、出入口、廊下・通路、エレベーター、トイレ、視覚障害者用の情報提供などの基準が定められている。

■交通バリアフリー法について・・・
 正式名称は、「高齢者・身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」。2000年5月に公布。2000年11月15日に施行されている。
 対象は、鉄道、バス、航空機、船、道路、信号機。

●内容は大きく分けて3つ・・・
<旅客施設のバリアフリー化>

 鉄道の駅舎、バスターミナル、航空ターミナル、旅客船ターミナルなどで、1日の乗降客が5000人以上ある旅客施設のバリアフリー化を促進。鉄道の駅舎に関しては高低差5m以上の施設に限定されている。新設、及び大規模な改良を行うときは義務となっているが、既存の施設については努力義務となっている。

<車両のバリアフリー化>
 鉄道車両、バス車両、航空機、船舶などのバリアフリー化を促進。ただし、タクシーや移動サービス及び高速バスなどは除外されている。新しく導入される車両については義務付けとなっている。

<基本構想の策定>
 市区町村が、旅客施設及びその旅客施設からおおむね半径500m〜1km以内にある主要な公共施設までの経路(道路)を含めて重点整備地域と指定して、その地域のバリアフリー化を進める基本構想を策定することを求めている。市区町村で策定することができるが、義務とはなっていない。

●移動円滑化基準について
 交通バリアフリー法では移動円滑化基準として、以下のものが定められている。
・駅舎に関しては、出入口の幅、通路の幅、EVの大きさや設備、視覚障害者用の情報提供などの基準
・車両に関しては、乗降口の幅や車いす対応スペースの設置、視覚障害者・聴覚障害者対応の情報提備などの基準
・道路に関しては歩道の設備や歩道の幅や高さ、歩道橋のEVの設置などの基準

●付帯決議について
 基本構想策定における当事者参画、タクシーの活用やSTS(スペシャルトランスポート)の導入などが国会で決議されている。

■現状報告
<交通バリアフリー法が施行されて2年半経つが・・・>
●成果

・愛知県で基本構想を策定しているところは、2003年9月現在で3市(名古屋市、岡崎市、春日井市)。
・駅舎については、EVの設置や多目的トイレ設置が進んでいる。JRでは金山駅や岡崎駅のような快速が停車する駅にEVがつき始めた。また、オストメイト対応トイレが設置され始めた。
・ノンステップバスやワンステップバスが増えてきた。
・名古屋市交通局は、交通バリアフリー法施行以前から「新しく導入するバスについてはすべてノンステップ」、「平成22年までに駅のバリアフリー化」を宣言している。
・名鉄も徐々にバリアフリー化に力を入れてきている。

●問題点
『車いす使用者等と一般客の動線の違い』
 日頃、利用している岐阜駅を例にとってみると、この駅は一応、「使える」駅になっているが、問題がある。岐阜駅の構造は「1階・出入口、2階・改札、3階・ホーム」で、EVは3基とも1階〜3階まで貫通している。不正乗車を防ぐため、2階〜3階まで鍵がかけられている。 これでは、誰にとっても自由に使えない。車いす使用者にとっても使いにくく、一般
の人なら余裕をもって乗れる電車でも、車いすでは駅員を待たなければならない。そのため、次の電車がくるまで待ったり、駅間の連絡ミスで下車する駅のホームに駅員が来ておらず、電車からホームまで降りれたとしてもホーム上に取り残されることもある。
 これらのことを防ぐためにも改札内に改札〜ホームに行くことができるEVが必要である。そうなれば、お年寄りやベビーカー使用者など誰でも使え、車いす使用者も駅員に気兼ねなく使うことができる。
 岐阜駅は車いす使用者と一般の人では動線が違う。動線が違うことで、駅員の手が必要になってきて、駅員を呼んだり待っている時間が生じ、その結果、一般の人よりも時間がかかることになる。

『列車とホームとの関係』
 列車とホームとの関係にも問題がある。列車とホームには隙間と段差があって、車いす使用者が単独では乗れないような場合がある。
 現状の交通バリアフリー法では「列車とホームの隙間と段差」についての基準があいまいな表現であるので、この問題が生じるのではないか? 列車とホームの隙間と段差がなくなるような基準が必要だ。

『その他』
・名鉄「知多奥田」駅には、EVが新設されたが、EVの使用時間が決まっていて、始発から終電まで十分使えない。
・ノンステップバスやワンステップバスが導入されているが、事前に時刻など調べていかないと、停留所にいつ来るかわからなくて使えないことがある。そういう事例をあげればキリがない。
・交通バリアフリー法が施行されたことはよいことだが、抜け落ちてしまっている点もある。

●まとめ
 岐阜駅の事例をあげたが、鉄道についていえば、どの駅でも誰もが自由に乗降できるような基準づくりが必要ではないか。 ハートビル法も交通バリアフリー法も主としてハード面の整備が謳われている。抜け落ちている点では、例えば、交通バリアフリー法でいえば、ノンステップバス導入についても、タクシーや移動サービスについても書かれていない。また、双方の法律の内容の充実を図るとともに、介助サービスとか、交通事業者の教育といったソフト面の充実も必要である。


■以下、質疑応答・討議・・・
●<交通バリアフリー法は、「移動」についてはどうか・・・>
・一般に「福祉のまちづくり条例」では、公共交通機関については、あまりふれられていない。
・利用者に使いにくい点があるとすれば、制度が不十分なのか?
 利用者側に工夫を求めるような規定になっているせいなのか?
・バスについては、交通バリアフリー法「第三章 車両等」の中に記述がみられるが、国土交通大臣が定める基準に適合しているものに限る、となっている。ノンステップバスだけを勧めているわけではなく、リフトバスでもよいということになる。 
・バスでいえば、同法三十五条二項では、「スロープ板その他の車いす使用者の乗降を円滑にする整備が備えられていること」ということでは不都合なのか?
・ワンステップバスが走り始めているが、備えられたスロープの勾配は急で、電動車いすにとっても怖い。手動車いすでは、とても上れない。
・ワンステップバスでは乗降が円滑にできないとなれば、法律の趣旨に合っていないのでは?

●<列車とホームの隙間と段差について>
・列車の中に段差のあるものもある。
・他については、数値として基準が示されていたりするのに、列車とホームの隙間と段差については、「・・・できる限り」ということばを使っている。
 開口幅80pなどのように言い切りができなかったのは、理由はよくわからないが・・・。
 列車がどんどん新しくなるとそこには基準がかかる。ところが、ホームは既存なので、「・・・できる限り」になるということだろうか。
・車両とホームの隙間について、何p以下ならよいということはいえないか?
・地下鉄の場合は車両は決まっているが、名鉄の場合、いろいろな車両が走る。ホームより床の低いものもあるので、現状では、床の高い車両に合わせてホームを嵩上げすると、かえって使いづらくなる場合がある。
・JRでは、車両を新しくしているので、ホームの嵩上げで対応していけると思う。
・ブルートレインが走るので、JR名古屋駅の3・4番ホームは、低くつくってあると聞いたことがある。
・「バスターミナルは円滑に乗降できる構造のものであること」、バスについては、「乗降を円滑にする設備が備わっていること」と言い切っている。
・列車とホームの隙間と段差について、要求側が、ある程度の数字の目安をどのくらいと示すことはできるのか?
・目安を示さないと、相手にはわからないので、「・・・できる限り」から先へ進まない。

<災害時を想定する場合・・・>
・階段の手すりは片側にしか設置されていない場合がある。上るときと降りるときでは使う側が逆になる。両側にないと使えない。両側にあれば、災害時でも、高齢者など手すりを使って、避難しやすいのではないか

・EVは災害時、使えない場合がある。
・ホテルなら、EVは動くが・・・、高層の建物で、どれぐらいの人が避難できるかと考えると、手すりを使っての避難の有効性はどうなのだろう。
・全盲の人が、階段を使って避難できたという話は聞いたことがある。
・どういったことを想定するかで対応が違ってくるし、どこまで対応するのかは、世の中の状況を見ていかないと・・・。
・障害者等が通っている事業所等が入ってる施設で、毎月一回避難訓練をしているところがある。どのような人がいるのかわかって、災害が起こったときに有効では?

<人によって違う使いやすさ>
・「・・・のぞましい」という表現だけでは、使いにくいものができる。手すりと便器の関係とか。
・障害によって、身体の大きさによって使いやすさは違う。
・「基準」「標準」というのはあるが、それから外れた人にとっては、使いにくいものになる。
・新設された福祉会館のEVに、後ろにカゴを付けていた電動車いすでスムーズに乗れなかったということを聞いた。

<利用の保障について>
・法律で基準を決めると、それに入らない人(場合)がでてくる。そういった人(場合)の対応も考えないといけない。
・アメリカのADA(障害者差別禁止法)では、鉄道や建築についても利用する権利が謳ってある。
 一方、日本のハートビル法や交通バリアフリー法は利用する権利が謳ってない。ハード面が整備されればOKということになっている。
・障害者運動の団体であるDPIは、障害者差別禁止法の制定を国に働きかけている。
・使う権利を保障しないと、使えない場合、事業者等に使えるようにといっても事業者等は断わることができる。
・権利の保障は誰がするのか?
・車いすのまま乗れる軽福祉タクシーというのがある。24時間利用できるはずだが、夜は担当者が帰ってしまうので、利用できない。ハードだけではムリということだと思う。

(記録:橋本知佳)

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